2013年8月9日金曜日

ハレのラグビー2

「俺なあ、やっぱりラグビーやっといてよかった思とってや~」

ドマさんは言った。
ドマさんは今、いわゆる造形屋しておられる。現場監督をする時、仕事を
する奴しない奴いろいろ見るらしい。

「ほんでも仕事せえへんから言うてそういう目でみんと、こいつにも合うてる
仕事内容があるはずやてそういうとこにはめたるように考えるからな~。
これ、ラグビーやったからできるようになったわ、ホンマ。適材適所
ちゅうやっちゃで、ンガハハハハハハハ!」

こういったことはよく耳にする。
確かなことは、ドマさんは、ラグビー(キャプテンの経験)からその枠を超えて
血肉になる何物かを得たのだ。
少なくともそう実感されていて、それをその後の人生に生かしておられる。
ドマさんのセリフの言い方を変えれば
「相容れない人間をも許容し、その個性を生かす方法を模索する意識を
ラグビーを通して得た。」

それがいかに素晴らしいことであるかお分かりいただけると思う。
現場監督なら、仕事のできない人間を切っていくなど簡単で当然のこと。
仕事ができないのは個人の問題と見られるのである。
であるにもかかわらず、クビにせず返ってその個人の力を引き出す場を
与えてやるとは。
これをラグビーでは、キャプテンシーと呼ぶ。
キャプテンシーというものの、まさに一側面と言える。

ただこれは、ほかの皆もそうであるはずだ。皆がそれぞれちがう何物かを
ラグビーから得ているはずなのである。
自分の体を真の意味ではって戦うスポーツであればこそ、得たものへの
実感はいよいよ強い。
少なくとも自分の会ってきた人々はその実感を笑顔とともに語る。

加えて、ご自分はプレーをできなかったが(もしこの人がもう少し遅れて
生まれていたなら!)、観察者という立場の人さえ、この実感を持っている。
ヒラノ女史は、このスポーツに寄り添い支援するというプレーをしている。
その熱は、まさにプレーヤーのそれである。
この人は、ラグビーから「熱」を得て走っている。

そのお二人が、他愛もない話で笑い合っている。それは、いい風景だった。
自分は楕円の神様から、一体何をもらったんだろうなあ。などとも思う
わけだこれが。まだよくわかっていないなあ。
そしてひるがえって、不幸にして、全く不幸にしてマイナスを得てしまった
人もいるだろう。
そういった方々のマイナスを、プラスにしてあげるよう努力するのも、
楕円のハレを知る者のつとめかもなあ、とも思った。
しかしその人たちは、自分たちにマイナスの部分を見せてくれるだろうか。
さりとて、あんまり見せたいものでもなかろうしなあ。
でもこれだけは言える。
さらけ出す側に悪意のない限り、ハレのカミガミは絶対にそのマイナスを
置き捨てにはしないだろう。彼らなりのやり方で-を+にしようと頑張って
くれるはずだ。
だって一緒にその場にいるだけで、その気がなくとも二人のハレのカミは
自分に元気をくだすっている。
そのつもりになれば何をかいわんや。

そしてハレのお二人はにこやかに盃を干し、自分のケを全くお払いくださり、
丸ノ内線の終電で帰って行かれたのである。

自分はその余韻を楽しみつつ、またも新宿ゴールデン街で御神酒を
上げたのである。ハレわたった夜だった。

写真はゴールデン街で必ず行く「夢二」というバーの入口なんだけども、
ようわからんな。






2013年8月6日火曜日

ハレのラグビー

「世界中の人間がラグビーやったらええねん!無くなんでォィ、戦争!!
ガハハハハハハハハハハ!!」

「だからあたしゃずっと男に生まれたかったョ!ラグビーできたもんね!」

この二つのセリフ、妙に頭に響き続けている。
両方、理論ぶっとび、飛躍アルプス一万尺、不条理といってもいい言葉
かもしれない。
しかし「確かにそのとおり」と納得できるのはなぜだろう。

んであれだ。懐かしいのだ。
自分がラグビーを好きな理由の一つに思い当たった。そうだ、こうした
人たちと、現役時代から出会えてきたからなのだ。

何杯目か忘れてしまった生ビールをあおりながらほろろんと思った。

銀座1丁目で飲んだと言うと、ちょっとお大尽な感じもするが、さにあらず。
ええ感じの立ち飲みがある。そのまま新宿3丁目に~。またうまい大衆
飲み屋がごちゃっとある。
そんな夜。

ガハハのドマさん。ハマモトの現役時、下宿「北星寮」の住人同士だった。
今でも強烈に憶えているのは、ドマさんの部屋の真ん中には、いつも
赤いバイクが一台とまっていた。
五畳半をひっぺがし、その部屋のど真ん中にバイク。あれはシュール
だった。だってそこは二階で、上がるにも粗末な鉄階段だけである。
お部屋におじゃましますと入れば、すぐ目の前がヘッドライトだった。
どないやって生活してはったのだろう。
柔道仕込みのスマザータックルで、四芸にはモヒカンヘッドで臨んだ
フランカー及びキャプテン。
この人に関するエピソード、伝説は枚挙にいとまがないので省く。
OBでご存知の方も多かろう。

あたしゃのヒラノ女史。ひょんなことから出会った、渾身これラグビー者、
と呼ぶにふさわしい才媛である。
この人は、ほんっっっとにラグビーが好きだ。こんなに楕円への愛に
溢れた人を自分は見たことがないのだが、面白いのは女性でありながら、
男のそれもプレーヤーを軽く凌駕する男気を持って生きておられると
いうことである。
理論より行動を、スマートさより土臭さを、賢さよりも根性を。
密かに舌を巻いている。

このおふた方に共通するのはそのポジティブさだ。別にラグビーに
限ったことでなく、話の全てがそう、書きながら気がついた、前を向いて
いるのだ。
話の内容は深いわけではない。自分も酔っていたので細部は記憶しない
のだが、ずっと皆ニコニコ笑っていた。あえて選んで明るい話をしていた
わけでもないが、おそらくこれは、このお二人の「徳」と言っていいだろう。
わかりやすくは「ハレのカミ」なのである。
自分は、ハレのカミガミと酒を飲んでいたのだ。

だから懐かしい。

そういやあ、自分は大学四年間を通して、主にラグビー部関係で、
なんと多くのハレのカミたる人々とあって話をさせていただいたことか。
この懐かしさは、そういった人々と再び会う嬉しさなのだ。

結局、OBになってまでひいこらラグビーをやっている理由のひとつは、
つまりこういうことだったのだ。となぜか納得できた。
ので、一番最初の二つのセリフ、なんと前向いた言葉だろう。現実的か
どうかを問うのは愚の骨頂、ハレの人々から流れ出る言葉はいつも明るく
楽しいのである。

で、続く。