2007年9月25日火曜日

よきナショナリズム・ジャージ

今回のタイトルは、各国の独自性、と言い直すと分かりやすい。
なおも世界杯の話である。

最近、各国のジャージがよく変わる。
各メーカーが新しい開発思想や素材を使い、いろいろとプレゼンをしているのだろう、見ていて面白い。

今は全体的にいわゆる「ピチジャー」の時代らしく、
その基本思想は「鍛え上げられたプレーヤーたちの体をより美しく見せるため」らしい。

なるほどそうか。しかしぴちぴちすぎてどうもな、と思わぬ場合がないでもないが、今日話したいのは、その上に描かれる色柄の事である。
各国代表にはそれと分かりやすい色とエンブレムがある。あれだけの人数が広い空間を駆けずり回るのだ、分かりやすくてしかるべきである。
ご存知の通り、ジャージが変わると書いたが、基本色は変わらない。その制限の中で各国のこれぞ、というべきユニフォームが存在する(ただしセカンドジャージは大きく変わったりするようだ、また、一部の国はファーストジャージも前回世界杯の時と全く違う色やデザインの場合もある。グルジア等がそうであった)。

そして今回大会の中で自分の目を引いたのは、南海の雄、サモアおよびトンガのファーストジャージだった。
サモアが青、トンガは真紅なのだが、他の国と比して独特であったのが、その柄である。
両国はその地理的分類において、南太平洋ポリネシア、メラネシアに属する。大小の島が集まる地域だが、そこには日常的な文化習慣として刺青の伝統が存在する。自分のルーツや護符的意味を文様にして、自分の体に刻み込んでいく。年々それを拡げていくわけだが、19世紀初頭には、全身が青く見えるほどの刺青に覆われた男性(戦士)がいたと言う。
ちなみにその姿を目の当たりにしたヨーロッパ人は、その印象を「美しい工芸品のような」と述懐している。そのあたりの話は非常に興味深いのだが、今は措く。
話がそれたが、とにかくその刺青は、戦士としての勇気や誇り、誉れの象徴だったらしい。それらの文様がバーンとジャージに描かれているのだ、こいつがまたカッコイイ。
サモアは腰のあたりに、トンガは両肩にでかでかと、これが独自性でなくして何なのだと言わんばかりにである。
確認したところ両国とも、メーカーはサモアがPUMA,トンガがKooGaであった。ここのデザイナーはよく分かっている、と手を打たんばかりに思った。
妙に未来的なデザインが多い中、自国の伝統文化に目を向けたところ、面白かった。だから個人的には今回の世界杯、ジャージのランキングは一位がトンガ、二位がサモアなのである。
画像があればまた載せたい。
刺青どうこうとうるさかったがついでに、「タトゥ−(TATOO)」と言う言葉も、元々かれらポリネシア人の使う「タウタウ(TAU-TAU)」という音が起源なのだそうだ。


実はサモア、トンガの国の人たちには、子どもの頃、日本人と同じく蒙古斑がある。
人種的系統が近いか同じらしい。言葉についても、母音と子音のはっきりした発音で、日本語に近い。

これに加えて、魏志「倭人伝」において、倭人(縄文時代の日本人)の特徴を言うに「鯨面文身」つまり全身に刺青を施しているとある。かつてはそういった習慣が日本にも存在したのだ。

それらの共通点から、日本人南方起源説において、同じ民族集団から枝分かれした一つがわれわれ日本人になり、もう一方が南の島々を伝い、ハワイ、サモア、トンガ、果てはニュージーランドのマオリ族になっていったのだと言われているが、そのあたり、考えていると胸が躍る。

われわれの兄弟たちがまた、フランスの地で戦っているのだと思うと、である。

2007年9月11日火曜日

LOS PUMAS

ロス・プーマス、南米アルゼンチン代表の別名である
(代表ジャージ左胸のエンブレムにピュ−マの意匠がある)。

このチーム、数年前までは完全なるラグビー後進国の代表であったはずだった。

IRB(国際ラグビーボード)のランキングでも、そう高い位置にあったわけではない。
過去三回の世界杯でも、オープニングゲームで必ず負けていた。

しかし今回。
いきなり金星を揚げた。

ご存知の方も多かろうが、開催国のまさにフランス代表からである。
フランスにとっては、あってはならぬことであった。


試合開始前から、両国の雰囲気は対照的であった。
格上らしく、あくまで静かに淡々とある仏に対し、アルゼンチンはというと、高ぶりきって多くの選手が瞳孔の開いた目に涙をためていた。主将ののピチョットなど、あんたキャプテンなんだからと、コーヒーを勧め落ち着かせてあげたくなるほど吼えまくっていた。

まだ国歌も歌っていない段階からである。
先にア国の国歌が流れたが、選手たち、絶叫(と言うよりも咆哮)していた。
やはり泣いている奴もいる。

観客席にいたア国ファンのおっちゃんなんぞは、感極まって嗚咽、涙にむせびながら歌っていた。さすが南米ラテンの国、選手もファンもアツいのである。

それに引き換え、同じラテン系ながらフランス、クールである。
見た目には冷静なフランス有利、の空気であった。

シャバル(仏)と言う絶対に人を二、三人は殺している顔の選手がいるが、
フランス国歌ラ・マルセイエーズを聞きつつ、表情一つ変えていなかった。

しかし、ふたを開けるとアルゼンチンが勝ってしまったのである。

一言で言うなら、気合と根性の度合いがまったく違った。

当たり前のように勝とうとしたフランスと、落ちる底のないアルゼンチンの、なんと言おうか、あがき具合の差であったように見える。

点差自体はつかなかったが、その試合は、アルゼンチン選手たちの鬼気迫るタックル、指一本のタッチでフランス選手を転ばせた気合、いわゆる「ゾーン」に入っていたのであろう。そのくせラフなプレーはまったく見られず、それはまさにプーマスの名前に恥じぬ戦い振りを見せ付けた試合だった。フランスもよく頑張っていた。

自分はこういった、技術や計算を飛び越えたぎりぎりの攻防が大好きである。
面白い試合であった。
そしてやはりアルゼンチンピチョット主将、泡を吹きつつ叫んでいた。

ふと思ったことには、同じラグビー後進国であったはずの日本とアルゼンチン、かたやフランスを倒し、かたやオーストラリアに92点と言う失点を許し負けた。
もちろん日本の戦いぶりも悪くなかったが、この差は何なのだろう。ちと遣る瀬無い思いに駆られる。サイズやパワーの差ではないような気がだんだんしてきたのであるが・・・。


ともあれ世界杯、見るべし。

できるだけ録画しようとは思うので見たい人はハマモトまで。