前回に引き続き。
好きが嵩じてその道を極めてしまう人がいる。
しかし当の本人は好きでやっているので、いつの間にか
頂点にたどり着いてしまった事実には拘泥することなく
淡々と自分のやることを片付けていく。
自分の仕事の凄さに自分であまり気づいてもいない。
そういったことがまさにこの人、小林深緑郎 氏にはふさわしい。
経験者ではない。全く頭脳でラグビーを楽しむ方だと思う。
言葉も多くない。おそらくむしろ口下手なのだと思う。そして、
試合観戦に没入して解説を放棄してしまう人である。
しかし、この人が一度口を開くと、自分は空恐ろしくなるのである。
ある試合(スーパー14)で、ある選手のことを語る。
「彼は何歳からラグビーを始め、好物はなになに。何年に
プロ契約を結びました。お父さんの職業は何で、弟もラグビー選手
です。ちなみにお母さんは何をしてておじいさんは国の
代表選手でした。」
小林さん、CIA?
ランダムに選ばれた選手についてこのくらいの情報などさらっと
言ってのける。
恐ろしいのは、選手が30人のテストマッチではなく、15人×14チームの
ス-パー14でこれだったのであって、一人の選手に対してこれだけの
データを持っておられるということは、正味160人以上の選手の情報を
把握しておられるということなのだ。
半端でないリサーチ量を想像させる。
チームのコーチ、監督の経歴までも披露してくれるのにはまあ驚く。
だから時々この人の言葉には、ずしっと腹に響く凄みを感じる時がある。
これも以前の、ある試合だった。
ある選手が犯した、海外の試合ではよくある小さなラフプレイを指して
小林氏はぼそりと言った。
「こういった点もってしても、この選手は代表チームに入る器では
ありません。まだ早いんです。」
NZ代表オールブラックスに初めて選ばれた時の、12番、マア・ノヌー
に対してである。
後の世界杯優勝メンバーを指して、「器じゃない」とこき下ろしたのだ。
その一言は、ラグビープレーヤーとしての格を問うたもので、
それはNZ代表に選ばれるということの意味、テストマッチを戦う
意味を理解した上で、ノヌー選手にとってその舞台が不釣り合いである
ことを指摘し、勝利ばかりをあせる首脳陣への批判を表明したもの
だったと思う。
いくら強かろうが、その前に体現すべき何物かが欠けていた時、
ラグビー選手として出場するべきではない試合が必ずあるのだと
いうことを教えられた気がした。
またこれはノヌー選手を否定するものではなく、その時点でまだ時期尚早
だということであって、現にその後成長したこの選手を小林氏はNZ代表
として評価している。
これには考えさせられた。
格、ラガーマンとしての品格。
自分は大きな顔してラグビーをプレーできるほどの格を持った選手
なのだろうか。
レベルに関係なく、備えねばならないプリンシプル(原則)を自分は
持つことができているのか。
例えば完全にプロ化したサッカーなどのスポーツと、アマチュアリズムを
未だ引きずるラグビーと、一線を画するものがあるとすればそれは
何なのか。
スティーヴ(小林氏のニックネーム)に、そうした問を突きつけられた
気がした。
解説どころか、視聴者を震わせさえするJスポーツ、ラグビーの解説者
たちなのである。
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